静脈認証

 技術的にも制度的にも、すでに実用化されている。
 政府がIT国家を目指す、という目標を掲げたのは、前々内閣(森内閣)の
ときではなかったか。いまのところ、カードとカード・リーダーとパソコン
が必要となる。なかでもカードとカード・リーダーは、いかにも古臭い。
 ムーアの法則が継続されてきた6年は、技術革新の6年でもある。256MBの
USBフラッシュメモリが、もう時代遅れになりつつあり、僅か800円で安売り
されている。
 カードの認証には、うっとうしい手続と、忘れるかもしれない暗証番号が
必要となる。これは、税務申告ばかりでなく、銀行、証券会社ほかのネット
取引にすべて必要になっている。
 本気で電子政府を目指すのなら、個人認証を見直しては、どうだろうか。
静脈認証には血流も確認できる技術が含まれるから、SF映画で、被害者の指
を切り取って読み取らせるシーンは創れない。これがのちのちカネを使わな
くなる時代につながるのなら、(誘拐と詐欺を防ぐ工夫と警察力は必要だが)
公務員と金融機関の従業員に、転職のための教育をはじめなければならない
だろう。新教育基本法には「生涯学習」も含まれているという意味でも‥‥。

隠れた税金

 『富の未来』下巻134ページには、次のように書かれている。
「通貨の発明は明らかに、世界を変えた点で人類の歴史のなかでもとくに
大きな出来事のひとつであり、資本主義経済はすべて金銭で動いている。
 この発明はその後さまざまに悪用されてきたが、それでも人類の生活が
飛躍的に向上する道を切り開いた。だが、‥‥通貨制度を利用すると、社会
全体が、そして個々人が、かなりのコストを負担することになる。
 このコストはほとんど認識されていないが、それは、財やサービスなどを
買うときに価格に組み込まれているからだ。‥‥中略‥‥」
 通貨の製造、保管、輸送、窃盗や偽造の防止、本物である確認、経理担当
者の給料、会計士の報酬、‥‥こうした経費は最終的に顧客に転嫁されるの
であり、通貨の利便性を得るためにわれわれが払う「隠れた税金」になってい
る。そして、この著書によれば、
「この隠れた税金を削減するか、なくすことができればどうなるのだろうか。
それは可能だろうか。知識に基く富の体制には、通貨がほんとうに必要なの
だろうか。」と結ばれている。