矛盾した法人税制

日本の税制は法人擬制説に拠っている。会社があげた利益については、それを配当金として受け取る個人株主に課税するものだとしており、法人税源泉徴収と同じような税の前取りで、個人が配当金として受け取った段階で調整されることになっている。そのため法人税は一律何%(現在は原則30%)ということになっている‥‥。
個人に対する所得税はどこの国でも累進課税になっており、所得の多い人ほど税率は高い。これは能力に応じて負担する、すなわち応能負担が近代民主主義国家の原則だからである。‥‥そこで、法人実在説に立つならば法人税累進課税でなければならない、‥ということになる。
さらに法人擬制説に立つと、法人が受け取る配当金は原則として非課税になる。‥‥いわゆる二重課税を避けるためである。‥‥これはその後、一部手直しはされているが、原則としては変っていない。
日本ではこれまで法人=会社による株式所有が圧倒的に多かったのだが、、税制はこれを無視し、株主はすべて個人だという前提にたった法人擬制説を採用していた。これはまったく矛盾したことだが、そのことが日本の法人=会社にとって極めて好都合なものであったことは言うまでもない。(A→B→C→Aというようにそれぞれ支配株式数を保有していたならば、議決権は系列各社の社長会に握られてしまう。また旧商法下では認められなかった自己株式の抜け穴になり、かつ資本充実の原則にも反する。)